この記事わかること
テキサス・インスツルメンツ(Ti)製の温度センサーIC 型式:LM61のVout出力電圧の評価試験を行いました。
LM61のデータシートに記述している、温度算出の式
”Vout出力電圧【mV】=10【mV/℃】× 温度【℃】+ 600【mV】”に準じるかの評価しました。
結果として、
上記、温度算出の式に相等する事を確認しました。
仕様 精度:±3.0℃ に対し、 観測値 ±1.7℃ となり、仕様範囲で有ることを確認しました。
測定環境は、個人的なレベル環境です。よって測定結果は、参考的なデータとなります。
測定装置(オシロスコープ、恒温槽、温度計)は、校正を行っていません。
温度センサーICの温度測定の基本知識については、ここを参照。
LM61の基本仕様
Ti製 型番:LM61基本仕様
表-1:温度センサーIC LM61の基本仕様
| 型番 | LM61 |
| 会社名 | Ti(Texas Instruments) |
| 温度測定範囲 | -25℃~85℃ |
| 精度 | ±3℃ |
| 温度勾配(傾き) | 10mV/℃ |
| 切片(0℃の電圧) | 600mV |
| 電源電圧 | 2.7V~10V |
| 出力インピーダンス | 800Ω |
Ti製、型番:LM61のデータシートより一部抜粋しました。
温度センサーICの温度対電圧特性
LM61の温度対出力電圧の特性(イメージ図)は、下記となります。
温度センサーICの温度と出力電圧関係がリニア(緑実線、緑破線は誤差)となります。
評価結果は、下記の特性を期待する事になります。

図-1:LM61の温度対出力電圧の特性(イメージ図)
詳細は、ここを参照。
温度対電圧特性の測定
各温度設定時(室温、20℃代、30℃代、40℃代、50℃代 計8点)の温度センサーLM61 Vout出力波形から電圧値を測定します。
目的
市販の温度センサーIC LM61を使い温度測定をして、温度対出力電圧の特性を作成します。
本特性と仕様の乖離について確認します。
精度についての確認します。
M61のデータシートに記述している、温度算出の式
”Vout出力電圧【mV】=10【mV/℃】× 温度【℃】+ 600【mV】”
室温~50℃代の温度精度±3℃です。
測定条件
恒温槽を測定する温度に設定、1分後に電源ON、約1分後にオシロスコープの波形で電圧測定します。
測定環境
以下に、温度センサーICと測定環境図を示します。

図-2:温度センサーICと測定環境図
LM61:Ti製 温度センサーIC 型式:LM61
C:1uF コンデンサー(ローパスフィルター用コンデンサー)データシートを参考
Temperature chamber:自作の恒温槽
Thermometer:温度計
Oscilloscope:オシロスコープ(電圧波形測定:RIGOL製 DS1202)
VDD:電源電圧(単一形乾電池 2個)
始めは、本ブログの為に購入した安定化電源(型式:SPPS-C3010W)を使いましたが、出力にノイズの発生が有り、本投稿の温度センサーICの電源には不採用としました。今回は、ノイズを最小化する電源として乾電池を採用しました。
この件については別投稿を予定しています。
GND:グランド
+Vs: 温度センサーICの電源(3.25V(1.5V乾電池を直列))
Vout:温度センサーICの温度アナログ出力電圧
Vout出力線の線材は、データシートにてシールド付きケーブル線となっていますが、本報告では単線としています。
LM61のVout出力接続の単線の長は、50cm。
Vout出力とGND間に、コンデンサー C:1uFを接続します。データシートの素子と同じです。
LM61内に800Ω(VDD=3.25V)と外付けコンデンサーC:1uF接続で、ローパスフィルター(LPF)を構成します。
LPFのカットオフ周波数には、下記の公式を参照。
カットオフ周波数:fc の目的:
fc 【Hz】= 1 /( 2 × Π × R【Ω】× C【F】)
fc 【Hz】= 1 /( 2 × 3.14 × 800【Ω】× 1【uF】)= 199【Hz】
計算では、fc =199【Hz】以上をカットします。(Vout出力線に乗るノイズ対策となります。)
判定基準
- 温度算出の式
”Vout出力電圧【mV】=10【mV/℃】× 温度【℃】+ 600【mV】”になること又は、近似した式になること。 - 測定した温度で温度精度:±3℃内になること。
結果
観測結果を下の記表に示します。
表-2: LM61の測定結果表
| ①:恒温槽内温度 [℃] | Vout [mV] | ②:算出温度 [℃] | 温度差( ①ー② ) |
| 19.1 | 788 | 18.8 | 0.3 |
| 27 | 876 | 27.6 | -0.6 |
| 29.1 | 908 | 30.8 | -1.7 |
| 36.4 | 960 | 36 | 0.4 |
| 44 | 1036 | 43.6 | 0.4 |
| 51.5 | 1100 | 50 | 1.5 |
| 55.2 | 1148 | 54.8 | 0.4 |
| 59.3 | 1176 | 57.8 | 1.7 |
恒温槽内の温度:
各温度設定において安定した時点の温度としました。
恒温槽は自作であり、決まった温度値にする事が難しい為です。
Vout:温度センサーIC Vout出力端子波形をオシロスコープで観測。
算出温度:Vout 出力値から温度を計算。詳細は、ここを参照。
温度差=( 恒温槽内温度ー算出温度)は、±1.7℃の範囲となりました。
測定時の波形:29.1℃時のVout波形とVDD波形を下記に示します。

図-3:29.1℃ Vout出力とVDD波形
結果グラフ

図-4:温度対出力電圧の特性
青点:測定値
橙破線:測定値からの近似直線
結果まとめ:
- ”図-4:温度対出力電圧の特性”結果から、
LM61のデータシートの温度値の計算式には、粗準じている事が分ります。
計算式:”Vout出力電圧【mV】=10【mV/℃】× 温度【℃】+ 600【mV】” - ”表-2: LM61の測定結果表”から
19.1℃~59.3℃の範囲では、仕様 精度:±3.0℃ > 観測 ±1.7℃ となりました。
所感
1個のサンプルでは有るが、仕様 精度:±3.0℃ に対し 観測の温度差 ±1.7℃内で有り、予想以上に精度が高いことが分りました。
1個のサンプルを使用した測定です。かつ測定環境も独自で個人的な測定評価です。

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