この記事でわかること
機械式リレーより累積動作時間の長いフォトリレーにも動作時間の寿命が有ります。
本記事では、回路設計のポイントとなるフォトリレー・フォトカプラーの寿命について説明します。
本記事の”寿命”とは、当初仕様範囲で動作していた機能(部品)が、経時変化で仕様範囲外の動作になることです。
フォトリレーの構造
下記に、フォトリレーの経時変化の観点からみた、基本内部回路を示します。
発光素子:LED
素材
- GaAs LED
- GaA lAs (DH) LED
- GaA lAs (MQW) LED
上記、LEDは、素材により光出力劣化状態が異なります。
LED素材は、東芝デバイス&ストレージ株式会社の”フォトカプラー・フォトリレーカタログ”より引用しました。
受光素子:MOSFET
フォトカプラーの構造
下記に、フォトカプラーの経時変化の観点からみた、基本内部回路を示します。
発光素子:LED
素材
- GaAs LED
- GaA lAs (SH) LED
- GaA lAs (DH) LED
- GaA lAs (MQW) LED
上記、LEDは、素材により光出力劣化状態が異なります
LED素材は、東芝デバイス&ストレージ株式会社の”フォトカプラー・フォトリレーカタログ”より引用しました。
受光素子:トランジスタ
フォトリレー・フォトカプラーの寿命は、発光素子(LED)の光出力劣化で決まります
フォトリレー・フォトカプラー内の発光素子(LED)の光出力は、累積発光時間により光出力劣化します。フォトリレー・フォトカプラーは、受光素子に比べ発光素子の経時変化が支配的であるため、使用されている発光素子の推定経時変化データ(光出力劣化グラフ)を用いて部品の経時変化(寿命)を推定出来ます。
回路設計を行う際は、使用環境、使用時間から発光素子の光出力変化を算出して、順方向電流(IF)値に反映させます。
フォトリレー・フォトカプラー寿命:
発光素子(LED)の光出力劣化経時< 受光素子の受光駆動時間
発光素子(LED)の素材の”光出力劣化”グラフから寿命を推定
光出力劣化グラフの説明フォトリレー・フォトカプラー動作期間を考慮した設計
発光素子素材 GaAs LEDの推定経時変化データの”故障判定基準 光出力劣化ΔPo<-30%”グラフを
下記に示します。
故障判定基準グラフは、東芝デバイス&ストレージ株式会社の”フォトカプラー・フォトリレーカタログ”より引用しました。
“故障判定基準”グラフ
”光出力劣化ΔPo”とは、初期のLED光出力に対する低下率のことです。
- 故障判定基準 光出力劣化ΔPo<-50%
初期の光出力特性に対して50%低下した時の出力特性を故障と判定する事です。 - 故障判定基準 光出力劣化ΔPo<-30%
初期の光出力特性に対して30%低下した時の出力特性を故障と判定する事です。
通常は、ΔPo<-30%のグラフ(上記)を使用します。
グラフのパラメータ”推定F50%寿命”と”推定F0.1%寿命”
- 推定F50%寿命
累積故障確率50%寿命で推定経時変化データにおける平均変化率AVGのラインが故障判定基準に
達した時間 - 推定F0.1%寿命
累積故障確率0.1%寿命で推定経時変化データにおけるAVG-3σのラインが故障判定基準に達した
時間
通常は、推定F0.1寿命(上記 水色ライン)を使用します。
本グラフで、フォトリレー・フォトカプラーの順方向電流(IF)を決めるポイントになります。
上記、グラフを使用して、
”X軸:仕様から温度範囲”と”Y軸:仕様から発光累積時間” が分るので、
温度範囲は、高い値
発光累積時間は、仕様時間より大きい値
から、推定F0.1寿命特性のIF値が分ります。
上記グラフから具体的な仕様値(赤色)として
(”故障判定基準 光出力劣化ΔPo<-30%”グラフ参照)
仕様 温度範囲:0~60℃
仕様 発光累積時間:40000時間以上 の場合
順方向電流(IF)は、20mA以下の値となります。
設計値としては、IF=10mAが良さそうです。
かつ、IFは各部品の定格順方向電流範囲内であること。
具体的な順方向電流(IF)の設計は、ここを参照1.ここを参照2。
発光素子(LED)の推定寿命データ(ブラフ)が該当部品のデータシートに記載されていない場合は、メーカーより別途入手する必要が有ります。
品質を意識した設計
本記事の発光素子(LED)の光出力劣化は、各LED素材データ(グラフ)を参考にした部品の寿命値を推定や参考とする事です。必ずしも寿命値や累積動作期間を保障するものでは有りません。
しかしながら、部品の寿命を意識した回路設計は、品質を確保する為の重要なポイントです。
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